食べごろのわらびを見分けて採るのはとても難しい
しなやかな、少しおじぎをしたような格好の山菜、わらび。春になると枯れ草の中からピョコピョコと1本ずつ顔を出します。全国に自生しているシダの仲間の一種で、若芽を山菜として食用にします。食べごろのわらびを見分けて採るのはとても難しく、芽吹いたばかりの頃は小さすぎますし、かといって1日置くとすごく成長してしまい、硬いわらびになり、シダになってしまうこともあります。清浄な自然の中の日当たりの良い場所に自生しており、平地では4月下旬頃から、山地では5月上旬頃から旬を迎えます。
わらびは古くから日本人に親しまれた山菜
山菜はその字のごとく、野山に自生している植物を食用として採ったものです。わらびは山菜の中でも知名度が高く、春に若葉がクルッと巻いているものを「早蕨(さわらび)」と呼んで、古くから春の季語にもされるほど日本人に親しまれてきました。平安時代の貴族は春になると薬狩りと称して、山菜摘みに出かけ、野原で宴を催すのが恒例だったようです。また早蕨は、呼び名も風情があって美しく、その美しい音感から多くの歌に詠み込まれました。
石走る 垂水の上の さわらびの
萌え出づる春に なりにけるかも
天智天皇の息子である志貴皇子(しきのみこ)の歌です。垂水の上で早蕨が芽吹き、緑がきれいな春が訪れたんだな、とほのぼのしている皇子の姿が目に浮かびます。この歌からわかるように、早蕨が春の到来を告げて人の心に喜びと希望を呼び起こす歓喜の象徴です。
都会に住んでいても山菜を楽しみたい!
都市部では萌える緑を臨む機会がなかなかなく、山菜も水煮のものが出回り、年中手に入れることができます。しかし、物流の進歩で都市部でも手軽に新鮮な生の山菜を手に入れられるようになりました。タケノコやフキに比べると、わらびの下処理はとても簡単です。細くて、火通りが早いので調理も短時間でできます。ぜひ見かけたら手にとってみてください。今だけしか手に入らない旬の食べ物として、春の萌え出ずる緑を想いながら大切に料理していただきましょう。